末梢神経の構造 神経線維・神経節
- 末梢神経の全身への分布状態と、解剖学の視点から見た分類法を説明します。
- 末梢神経の基本的構造として、信号の伝達路である神経線維束(しんけいせんいそく)と、ニューロンの乗換・交代箇所である神経節(しんけいせつ)を易しく解説します。
分布・解剖学的視点から見た末梢神経系の分類
- 脊髄から出る神経を脊髄神経と呼び、脳から出る神経を脳神経と呼びます。
- 脊髄または脳から出る末梢神経は、体のどの部分を走行するか決まっており、解剖学的な立場からそれぞれに名前が付いています。
- 脳神経は12対あり、一対一対名前が付いています。その多くは頭部へ伸びていきます。副交感神経として体調のバランスを整える迷走神経は、頭部のみならず、首や胸、腹に伸びていき広範囲の内蔵を制御します。
- 脊髄神経は、頚神経(けいしんけい)が8対、胸神経(きょうしんけい)が12対、腰神経(ようしんけい)が5対、仙骨神経(せんこつしんけい)が5対、尾骨神経(びこつしんけい)が1対の、合計31対あります。
- 運動神経や感覚神経や自律神経等の名称は機能面からの呼び名、脳神経や脊髄神経の1対1対の名称は解剖学的分布の面からの呼び名です。運動神経や感覚神経や自律神経が混在して、脳神経、脊髄神経の1対1対を構成しています。
神経線維束
- 脊髄内に集まっている神経細胞から軸索(じくさく)が束となって体の各部分に向かいます。この神経細胞の軸索の束を神経線維束(しんけいせんいそく)、または、神経線維(しんけいせんい)と呼びます。
- 神経線維束は複数集まり、脂肪組織や細い血管などと寄り合わさって神経を構成します。
神経節
- 末梢神経の神経線維束が伸びていく途中に、神経細胞が集まりコブのような形状をとる部分があります。ここでは、脊髄や脳等の中枢神経から伸びてきた軸索が、次の神経細胞とシナプスによって連絡しており、神経節(しんけいせつ)と呼ばれています。この、神経細胞が次の神経細胞に連絡していることを、神経細胞を乗り換える、と表現する場合があります。
自律神経系の神経節
- 自律神経では、中枢神経から伸びる神経線維が直接制御対象の臓器や器官に到達することはなく、途中の神経節(特別に自律神経節と呼ぶこともある)において、1回だけ神経細胞を換えて制御対象の臓器、及び、器官に向かいます。これは、自律神経の神経細胞が長い軸索を持つことを意味しています。
- 神経節よりも中枢神経側の神経線維を節前線維(せつぜんせんい)と呼び、神経節よりも末梢側、つまり臓器や器官の側の神経線維を節後繊維(せつごせんい)と呼びます。節後線維が制御対象の臓器に到達します。
- 自律神経の中でも交感神経の神経線維は、中枢に近いところ、つまり、制御対象の臓器から遠いところで神経節を作ります。特に、脊柱に沿って連なる、交感神経の神経節を、交感神経幹(こうかんしんけいかん)と呼びます。”星状神経節ブロック療法”の名前で知られる星状神経節(せいじょうしんけいせつ)は、交感神経幹の一部で、首の付け根程に位置します。
- 脊髄から出た交感神経の神経線維(交感神経の役割を果たす神経細胞の細胞体が脊髄にあり、その神経細胞の軸索が脊髄から末端に向かって伸びていったもの)は、交感神経幹で神経細胞を乗り換えて制御する臓器に向かうものと、交感神経幹で神経細胞を乗り換えずに素通りし、その先にある神経節である腹腔神経節(ふくくうしんけいせつ)、上腸間膜神経節(じょうちょうかんまくしんけいせつ)、下腸間膜神経節(かちょうかんまくしんけいせつ)などで、神経細胞を乗り換えて臓器に向かうものがあります。
- 一方、副交感神経の神経線維は、中枢から離れたところ、つまり、制御対象の臓器の極近く、場合よっては制御対象の臓器内で神経節を作ります。多くの場合、神経節において1本の節前線維が1本の節後線維に接続し、節後線維が短いため、単独の臓器や器官に影響を与えることができます。