交感神経・副交感神経・運動神経における神経伝達物質のまとめ
交感神経
一般に、交感神経の節前線維末端ではアセチルコリンによる伝達が行われています。節前線維細胞のシナプス前膜からアセチルコリンが放出され、シナプス後膜にあるニコチン受容体(ニコチン性アセチルコリンレセプター)(NN受容体)で受け取ります。
交感神経の節後線維末端では、ノルアドレナリンによる伝達が行われています。支配器官に到達した節後線維細胞のシナプス前膜からノルアドレナリンが放出され、支配される器官の細胞のシナプス後膜にあるアドレナリン受容体で受け取ります。支配される器官の細胞膜上にあるアドレナリン受容体は、その器官ごとに、α受容体(アルファレセプター)、β受容体(ベータレセプター)が分布しています。
また、交感神経のシナプス前膜には、アドレナリンレセプタであるα2受容体、および、ムスカリン性アセチルコリンレセプターであるM2受容体があります。α2受容体もM2受容体も共に、抑制作用を持つ受容体です。α2受容体は自分で放出したノルアドレナリンと結合して、さらなるノルアドレナリンの放出を抑制する方向にはたらきます。自分自身を抑える負のフィードバック機構と言えます。もう一方のM2受容体は、副交感神経の緊張によって放出されたアセチルコリンと結合することで、交感神経からのノルアドレナリンの放出を抑制する方向に働きます。副交感神経が交感神経を抑制する排他的制御機構と言えます。
例外的に、汗腺を支配している交感神経は、節前線維末端、節後線維末端ともにアセチルコリンを神経伝達物質として使うコリン作動性の神経です。
副腎髄質細胞からのアドレナリン放出
副腎は腎臓の上方にある小さな臓器で、副腎皮質(ふくじんひしつ)と副腎髄質(ふくじんずいしつ)からなります。副腎髄質からはアドレナリンがホルモンとして血中に放出され、副腎皮質からは、副腎皮質ホルモンとして、アルドステロン、コルチゾール、アンドロゲン(男性ホルモン)等生理活性をもつ7種類のステロイド類が放出されます。
副腎髄質を支配する交感神経は、中枢神経から出たのち、神経節でニューロンを乗り換えることなく直接へ支配器である副腎髄質に到達し、シナプス前膜からアセチルコリンを放出します。かたちとしては、副腎髄質が交感神経の節後線維であり、副腎髄質に到達している交感神経が、節前線維という状態になっているとも見れます。実際、副腎髄質は、節後線維がそうするように、ニコチン受容体(ニコチン性アセチルコリンレセプター)(NN受容体)でアセチルコリンを受け取り、アドレナリン(人ではノルアドレナリンよりアドレナリンが支配的)を放出します。発生学的にも副腎髄質と神経細胞は親近の関係にあると言われます。
交感神経の緊張により、副腎髄質から血中にアドレナリンが放出され、血中のカテコラミン量が増えるわけです。
副交感神経
副交感神経では、節前線維、及び、節後線維でアセチルコリンが神経伝達物質として利用されています。節前線維細胞のシナプス前膜からアセチルコリンが放出され、シナプス後膜にあるニコチン受容体(ニコチン性アセチルコリンレセプター)(NN受容体)で受け取ります。節後線維細胞のシナプス前膜でもアセチルコリンが放出されますが、支配器側細胞のシナプス後膜ではムスカリン受容体(ムスカリン性アセチルコリンレセプター)でアセチルコリンを受け取ります。
また、副交感神経のシナプス前膜には、アドレナリンレセプターであるα2受容体があり、交感神経の緊張により放出されたノルアドレナリンと結合することで、副交感神経からのアセチルコリン放出を抑制させます。これも交感神経が副交感神経を抑制する排他的制御機構といえます。(交感神経にも同様な排他的制御機構があることを思い出してください。)
運動神経の骨格筋への作用
運動神経が骨格筋に接合する部分を神経筋接合部と呼びます。運動神経は自律神経と異なり、軸索の周囲に髄鞘が発達し、信号伝導が高速に行われます。また、中枢から出た神経線維は途中の神経節でニューロンを乗り換えることもなく支配器である骨格筋に到達するので、神経節での神経細胞の乗り換えにかかる遅延もありません。運動神経終末に興奮が到達するとシナプス前膜からアセチルコリンが放出され、支配器である骨格筋細胞のシナプス後膜のニコチン性アセチルコリンレセプター(NM受容体)でアセチルコリンと結合します。